Hallの定理とその応用
[Def]近傍
グラフの任意の点集合に対して、のどれかの点に隣接する点の全体をにおけるの近傍と呼び、やと書く。
を2部分割を持つ2部グラフとするとき、の点がすべて飽和されるようなのマッチングを見つけることは応用上重要である。
[Thm]Hallの定理
を2部分割を持つ2部グラフとする。
はの点を全て飽和するマッチングを持つ任意のに対して、
(証明)
()
の全ての点を飽和するマッチングをとする。
任意のを考える。
を飽和するの辺を集めた集合をとすると、
.
が飽和するの頂点は全ての元である。
よって、.
つまり、. ■
()
を部集合に持つ2部グラフでを満たすものをとする。
そこではの点を全て飽和するマッチングを持たないと仮定して矛盾を導く。
をの最大マッチングとする。
仮定により、に属する非飽和点が存在する。
そこで、を交互道によって、に連結するような点の全体の集合とする。
は最大マッチングだから、はの中で唯一の非飽和点である。(もし、そうでないとすると増加道が存在することになりの最大性に矛盾。)
とおく。
明らかにの点はの下での点とマッチングされているから
であり、が成り立つ。
のどの点も交互道によりに連結されているので.
よってが成り立つ。
よってとなって仮定に矛盾。 ■
[Prob]Hallの定理を応用した面白い問題
トランプのカード52枚を4枚ずつ13個のグループへ任意に分けた時、各グループから1枚ずつカードをうまく選ぶと、A,2,3,4,5,6,7,8,9,10,J,Q,Kを1枚ずつ取り出せる。
(解答)
グループに対応する頂点の集合
カードのランクに対応する頂点の集合
とおく。
の各点(グループのこと)に対して、その点とその点に対応するグループに属するカードのランクに対応するの点を辺で結ぶ。そうでないとき辺を引かない。
この操作により2部グラフができる。
を考える。
はに属するグループに含まれるカードのランクに対応する。
に属するグループに含まれるカードの総数は
に対応するランクのカードの総数は
と仮定する。
個のグループをに対応するランクのカードだけでつくれない。
実際個のグループをつくるには枚のカードが必要であるが、この仮定のもとでは枚のカードしか用意できないためカードが足りなくなる。
よって.
つまりHallの定理にある条件が成り立つのでを飽和するマッチングが存在する。
そこから各グループからどのカードを選べばよいかわかる。■