Sobolevの不等式の応用①
前回は拡張定理の記事を書きました. 拡張定理とSobolevの不等式を使うとソボレフ空間 と 空間の関係がわかります.
[定理] (Estimates for )
は有界開集合で境界 は 級であると仮定する. とする. このとき であり, にのみ依存する正の定数が存在し,
が成り立つ.
(証明)
が有界かつ境界が 級なので拡張定理より拡張作用素 が存在する. をとる. とおく. フリードリクスの軟化作用素の議論から は で稠密であるので
.
ここでSobolevの不等式より, 任意の に対して
が成り立つ. は でCauchy列なので, 上式右辺はCauchy列であり, 従って左辺もCauchy列になる. ここで の完備性より,
.
部分列をとって とできる. 一方 でもあるから, さらに部分列をとって とできる. よって が成り立つ. 従って が成り立つ. 再びSobolevの不等式より
となるから, として
が成り立つ. また, 上では a.e. で となるので
が成り立つ. 上2つの不等式を組み合わせて
が成り立つ. 最後の不等号では拡張作用素の性質(3)を用いた. (証明終)
証明中にフリードリクスの軟化作用素の話が出ましたが, いつかこれについて書こうと思います. 解析学で非常に重要な概念です. 関数に作用させると滑らかな関数になり, 元の関数を概収束・平均収束の意味で近似できます. 微積分的に扱いやすい滑らかな関数で近似できるので, まずは滑らかな関数で不等式を示し, その後極限をとって 関数でも成り立つという議論がよく行われます (稠密性の議論でよくやるやつです). フリードリクスの軟化作用素については黒田関数解析(共立出版)や宮島ソボレフ空間(共立出版)やEvansのPDEに詳しく書かれています.