はむ。日記

離散数学とか解析学とかアニメについてつぶやきます。

Poincaréの不等式

[定義] 空間 W_{0}^{1,\, p}

 W_{0}^{1,\, p}(U):= \overline{C_{0}^{\infty}(U)}\ \ \text{in}\ \ W^{1,\, p}(U)

 

[定理] (Poincaéの不等式)

U\subset \mathbb{R}^n有界開集合, u\in W_{0}^{1,\, p}(U),\ 1\le p \lt n とする.  このとき,

\forall q\in [1,\, p^{*}],\ \exists C_{p,\, q,\, n,\, U}\gt 0\ \ \text{s.t.}\ \ \|u\|_{L^{q}(U)}\le  C_{p,\, q,\, n,\, U}\|\nabla u\|_{L^{p}(U)} .

 

(証明) 

u\in W_{0}^{1,\, p}(U)なので

\exists \{u_{m}\}\subset C_{0}^{\infty}(U)\ \ \text{s.t.}\ \ u_{m}\rightarrow u \ \ \text{in}\ \ W^{1,\, p}(U) .

u_{m}U の外で0として \mathbb{R}^n 全体に拡張したものを \overline{u_{m}} とおく.  \overline{u_{m}}\in C_{0}^{\infty}(\mathbb{R}^n) であることに注意する. Sobolevの不等式より

\|u_{m}\|_{L^{p^{*}}(U)}= \|\overline{u_{m}}\|_{L^{p^{*}}(\mathbb{R}^n)}\le C\|\nabla \overline{u_{m}}\|_{L^{p}(\mathbb{R}^n)}=C\|\nabla u_{m}\|_{L^{p}(U)}

となる. ここで前回の記事と同様の議論により m\rightarrow \infty として

togedemaru419.hatenablog.com

 \|u\|_{L^{p^{*}}(U)}\le C\|\nabla u\|_{L^{p}(U)}

を得る. |U|\lt \infty なので, 任意の q\in [1,\, p^{*}] に対して

f:id:togedemaru419:20200908233445p:plain

 となる. 上から2行目はヘルダーの不等式を用いた. また  Cp,\ q,\ n,\ U に依存する定数である. 従って任意の q\in [1,\, p^{*}] に対して

\|u\|_{L^{q}(U)}\le C\|u\|_{L^{p^{*}}(U)}\le C_{p,\, q,\, n,\, U}\|\nabla u\|_{L^{p}(U)}

が成り立つ.    (証明終)

 

 

W_{0}^{1,\, p}(U) の場合拡張定理を必要とせず自然に拡張できるため, 境界の滑らかさの条件は必要ないです. このため, 前回の W^{1,\, p} の場合と違って不等式の右辺がソボレフノルムでなく, より強い条件である弱微分 L^p ノルムで抑えられることがわかります.

本定理はSobolevの不等式とヘルダーの不等式のコンボで示せました. Uルベーグ測度有限という仮定から, ヘルダーの不等式を用いて  p\le q \Rightarrow L^{q}(U)\subset L^{p}(U) が示せることは知っておきましょう.