はむ。日記

離散数学とか解析学とかアニメについてつぶやきます。

Sobolevの不等式の応用①

前回は拡張定理の記事を書きました. 拡張定理とSobolevの不等式を使うとソボレフ空間   W^{1,\, p}L^{p^{*}} 空間の関係がわかります.

 

[定理] (Estimates for W^{1,\, p}\ \ 1\le p \lt n )

 U\subset \mathbb{R}^{n}有界開集合で境界 \partial U C^{1} 級であると仮定する. 1\le p \lt n,\ u\in W^{1,\, p}(U)とする.  このとき u\in L^{p^{*}}(U)\ \ (\frac{1}{p^{*}}=\frac{1}{p}-\frac{1}{n}) であり, p,\, n,\, U にのみ依存する正の定数Cが存在し,

\|u\|_{L^{p^{*}}(U)}\le C \|u\|_{W^{1,\, p}(U)}

が成り立つ.

 

(証明)

U有界かつ境界が C^1 級なので拡張定理より拡張作用素 E\in B(W^{1,\, p}(U),\ W^{1,\, p}(\mathbb{R}^n))が存在する. u\in W^{1,\, p}(U) をとる. Eu = \bar{u} とおく. フリードリクスの軟化作用素の議論から C_{0}^{\infty}(\mathbb{R}^n)W^{1,\, p}(\mathbb{R}^n)で稠密であるので

\exists \ \{u_{m}\}\subset C_{0}^{\infty}(\mathbb{R}^n)\ \ \text{s.t.}\ \ u_{m}\rightarrow \bar{u}\ \ \text{in}\ \ W^{1,\, p}(\mathbb{R}^n) .

ここでSobolevの不等式より, 任意の l,\, m\in \mathbb{N} に対して

\|u_{m}-u_{l}\|_{L^{p^{*}}(\mathbb{R}^n)}\le C \|\nabla (u_{m}-u_{l})\|_{L^{p}(\mathbb{R}^n)}

が成り立つ. \{u_{m}\}W^{1,\, p}(\mathbb{R}^n) でCauchy列なので, 上式右辺はCauchy列であり, 従って左辺もCauchy列になる. ここでL^{p^{*}}(\mathbb{R}^n) の完備性より,

\exists \ \tilde{u}\in L^{p^{*}}(\mathbb{R}^n)\ \  \text{s.t.}\ \ u_{m}\rightarrow \tilde{u} \ \  \text{in}\ \ L^{p^{*}}(\mathbb{R}^n) .

部分列をとって u_{m_{k}}\rightarrow \tilde{u}\ \ \text{a.e.} とできる. 一方   u_{m_{k}}\rightarrow \bar{u}\ \ \text{in}\ \ L^{p}(\mathbb{R}^n)でもあるから, さらに部分列をとって u_{m_{k}^{'}}\rightarrow \bar{u}\ \ \text{a.e.} とできる. よって   \tilde{u} = \bar{u}\ \ \text{a.e.} が成り立つ. 従って  u_{m}\rightarrow \bar{u}\ \ \text{in}\ \ L^{p^{*}}(\mathbb{R}^n) が成り立つ. 再びSobolevの不等式より

\|u_{m}\|_{L^{p^{*}}(\mathbb{R}^n)}\le C\|\nabla u_{m}\|_{L^{p}(\mathbb{R}^n)}

となるから, m\rightarrow \inftyとして

\|\bar{u}\|_{L^{p^{*}}(\mathbb{R}^n)}\le C\|\nabla \bar{u}\|_{L^{p}(\mathbb{R}^n)}

が成り立つ. また,  U 上では a.e. で u=\bar{u} となるので

\|u\|_{L^{p^{*}}(U)}=\|\bar{u}\|_{L^{p^{*}}(U)}\le \|\bar{u}\|_{L^{p^{*}}(\mathbb{R}^n)}

が成り立つ. 上2つの不等式を組み合わせて

\|u\|_{L^{p^{*}}(U)}\le C\|\nabla \bar{u}\|_{L^{p}(\mathbb{R}^n)}\le C\| \bar{u}\|_{W^{1,\, p}(\mathbb{R}^n)}\le C'\|u\|_{W^{1,\, p}(U)}

が成り立つ. 最後の不等号では拡張作用素の性質(3)を用いた.    (証明終)

 

証明中にフリードリクスの軟化作用素の話が出ましたが, いつかこれについて書こうと思います. 解析学で非常に重要な概念です. L^p関数に作用させると滑らかな関数になり, 元の関数を概収束・平均収束の意味で近似できます. 微積分的に扱いやすい滑らかな関数で近似できるので, まずは滑らかな関数で不等式を示し, その後極限をとって L^p 関数でも成り立つという議論がよく行われます (稠密性の議論でよくやるやつです). フリードリクスの軟化作用素については黒田関数解析(共立出版)や宮島ソボレフ空間(共立出版)やEvansのPDEに詳しく書かれています.